第1四半期のGDP成長率は前年同期比3.1%、輸出が牽引

(香港)

香港発

2025年05月09日

香港特別行政区政府統計処は5月2日、2025年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率(速報値)が前年同期比で3.1%と発表した(添付資料図参照)。前期(2024年10~12月期)から0.6ポイント上昇し、香港政府が公表した2025年通年のGDP成長率見通し(2.0~3.0%)を上回った(2025年3月3日記事参照)。

第1四半期のGDP成長率を需要項目別にみると、個人消費支出は前年同期比1.2%減と、前期(0.2%減)から減速幅が広がり、4期連続のマイナスとなった。固定資本形成は2.8%増で、前期(0.7%減)から3.5ポイントの大幅な増加をみせた。政府消費支出は1.2%増加したが、前期(2.1%増)から0.9ポイント低下した。財輸出(8.7%増)と財輸入(7.4%増)はいずれも、前期(それぞれ1.3%増、0.4%増)から大幅に増加した。サービス輸出は6.6%増加し、前期(6.5%増)から微増した。サービス輸入は6.2%増となったが、前期(8.3%増)より減速した。

香港政府報道官は2025年第1四半期の実質GDP成長率について、「堅調に拡大した」と評価する一方、個人消費の低迷については、「香港居住者の消費パターン(注)の変化の影響が続いている」と述べた。今後の見通しについては、「米国による輸入関税の大幅な引き上げを契機として、4月上旬に世界的な貿易摩擦が急激に高まったことから、世界経済を取り巻く下振れリスクが顕著に高まっている」との見解を示した。

香港大手商業銀行の大新金融集団のチーフエコノミスト兼ストラテジストの温嘉煒氏は、香港の第1四半期の経済成長が加速した要因について、「米国による対中国追加関税の引き上げを見越した前倒しの輸出が原因」との見解を示した。一方、今後については、「FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げペースが不透明なため、香港の不動産市場の見通しに影響を及ぼす可能性があることなどから、香港域内の消費市場(の回復)も引き続き制限される可能性がある」と指摘した(「信報」紙5月2日)。

なお、香港政府統計処は5月16日に2025年第1四半期のGDP成長率の詳細を公表する予定。

(注)中国本土との往来再開に伴い、香港居住者の休日の消費行動は、従来の「香港内での消費」から、「物価が安く選択肢も豊富な深セン市への日帰り旅行」へと移行しつつある。

〔黄莃倫(ケリー・ウォン)〕

(香港)

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